私がチーズという言葉を知ったのは昭和29年(1954年)、大学1年19歳の時。2年先輩が学内誌に「チーズのあれこれ」を書いたからだったが、戦後復興間もない日本で、現物など見ることすらできなかった。しかし、洋趣味だった私に、この「チーズ」という言葉だけは妙に記憶に残った。

それから15年、時は昭和44年(1969年)処はメルボルン。ある豪州有数銀行の重役食堂でよばれたチーズの味と雰囲気が、いまだに忘れられない。落ち着いたシックなウオールナットの部屋で食後、リキュールを傾けながらクラッカーに乗せて口にしたブルーチーズ。ナイフで削っては食べたその味はまさにチーズの真髄、これこそが本格的なチーズとの最初の出合いだった。